Fast Track Triathlete 02(序章・第1部1章)

Fast track triathleteの序章と一章を紹介します。これらの章では、トレーニングする上での心構えや物の見方(マインドセット)に関する概念的な内容が中心で、具体的な内容は3章以降で解説されています。一章の内容を簡単にまとめると次の4点になります。いずれも当たり前の内容ですが、私の場合実際に実行できていたかというとできていないことが多かったです。

  • パフォーマンス向上には、3種目それぞれのトレーニングに加えて、ストレングストレーニング(筋トレやコアトレーニング)、栄養摂取・カロリー補給、回復もトレーニングと同等の優先度で取り組む
  • トレーニング時間や量を練習の成功基準にしない
  • トレーニングだけではなく、仕事や家庭など生活全体を見渡して、現実的なトレーニング時間や方法を考える
  • 仕事や家庭生活では突発的な予定変更が発生するものであり、現実的でないトレーニング計画に固執しない

Introduction(はじめに)

  • 著者のMatt Dixonは水泳のエリート選手としてオリンピック最終選考会まで進んだ経験があり、プロトライアスリートとしてもいくつかの大会で勝つことができた。しかし、本来の力を十分発揮する事ができないまま、最終的には燃え尽きてしまった。
  • その原因は、強度(Strength)、コンディション調整(Conditioning)、栄養摂取(Nutrition)、回復(Recovery)の4つの観点から持久トレーニングを最適化しなかったから。これら4つのポイントはパフォーマンス向上における柱であり、経験を問わず全てのアスリートが考慮すべきものである。
  • この本は、自分にとって必要なことに焦点を絞ることができるアスリートや、「もっとやらなければ」という罠に陥らないようなアスリートのためにに書かれている。逆にトレーニングの時間や距離の合計を気にするようなアスリートや、「いかなる代償を払ってもパフォーマンを高めたい」というマインドセット(物の見方)のアスリートにとっては役立たない。
  • 限られた時間でパフォーマンスを高めることは可能であり、焦点を絞ったトレーニングをすることが成功のための最良の方法である。

Part 1 The Performance Journey(第一部:パフォーマンス向上の旅)

1.Mindset(マインドセット・物の見方)

  • 適切なマインドセットを持つことが、何よりもまず重要で、期待を下回る結果に終わる原因は、大抵の場合、不適切なマインドセットによるそのため適切なマインドセットを持つことは、インターバルトレーニング等の練習メニューよりもはるかに重要。

●Balancing The Sport/Life Equation(スポーツと生活のバランスをとる)

  • プロ選手から練習方法やレース展開について学ぶことは数多くあるが、アマチュアレベルの選手がプロ選手を真似ようとするのは間違い。多忙なアマチュア選手は、競技能力の点でも、仕事や家庭に責任をおっているという点においても多くの制限を抱えているため、プロ選手を真似たトレーニングプログラムを行ってもパフォーマンス向上は望めない。もし、プログラムを効果的に実行する能力がなければ、失敗につながるし、最終的には過負荷や消耗を招く。
  • アマチュア選手はバランスの取れた生活の範囲内でパフォーマンス向上を追求すべき。目標とすべきことは、生活を犠牲にしてまでKonaの出場資格を得ることでも、単に前回のレースの記録を上回ることでもないはず。パフォーマンス向上は、健康・健全さというプラットフォーム(基盤)の上に成り立つものである。
  • 全ては自分の生活状況を理解することと、それにトライアスロンをどうフィットさせるかを考えることから始まるこれはプロ選手と意欲的なアマチュア選手では大きく異なる。プロ選手はトレーニングを中心に生活が回っていて、パフォーマンスの最大化が最優先事項である。一方で、アマチュア選手は、トレーニング以外のやるべきことを全て見渡した状態でスポーツに臨むべきである。
  • 適切な集中力をもってトレーニングに臨むには、スポーツを中心に生活を組み立てるのではなく、適切な生活を保った状況下でハードなトレーニングを追求するべき

●Integrate, Dont Accumulate(積算ではなく統合せよ)

  • トレーニングの目的は、最高のパフォーマンスを発揮できる状態でレースを迎えること。プロ選手とアマチュア選手では、トレーニング量や生活におけるトレーニングの優先順位は全く異なるが、その目的(Mission)は同じ。
  • 多くのアマチュア選手はトレーニング時間や距離の積み上げを成功の判断基準にしているがそれは誤りそうではなく、常に自分の生活全体を見渡そうとするマインドセットを獲得すべき。数ヶ月に渡って着実に物事を進めていくこと(Consistency)や、レース当日を最高の状態で迎えるために週単位で徐々に身体を適応させようとするマインドセットを持つことが重要。適切なマインドセットを備えていれば、「常に生活とスポーツの最適なバランスを保ちながら、現実的なトレーニング時間の範囲内で、その負荷を最大化する」という明確な意図をもってトレーニングすることができる
  • 本当の成功のためには、月単位で着実にトレーニングを重ねていくことが必要。そのためには、個人毎に特有の生活環境を考慮して現実的なアプローチを行うべき。それは、ケガや病気のリスクを抑え、疲労やフラストレーションを低い状態に保つことも助けてくれる。
  • 目指すべきは、意図を持ってトレーニングを実行することであり、トレーニング負荷に積極的に順応(Positive adaptation)するために、トレーニングとリカバリーの適切なバランスをとる必要がある。また、慢性疲労やトレーニングに対する退屈さ、ストレスの増加、その他の仕事や家庭の懸念事項のような、長期的な課題につながる消極的な順応(Negative adaptation)に対して継続的に注意を払う必要がある。
  • これらを実現するためには「蓄積(Accumulation)」ではなく「統合(Integration)」という発想を持つべき適切なトレーニング負荷を生活に「統合」することができれば、最高のパフォーマンスを発揮することができる。

●Train For One Sport, Not Three(一つのスポーツとしてトレーニングせよ)

  • トライアスロンは比較的歴史の浅いスポーツ。現在普及しているトレーニング方法のいくつかは、1970年代のトライスロン初期に人気があったもので、「より多く練習するほど良い(More is better)」という意識は、トライアスロンの開拓者たちが好んでいたものの一つ
  • 1980年代中頃までアイアンマンレース向けの明確なトレーニング方法は存在しなかった。プロ選手や野心的なアマチュア選手は、エリートレベルのプロ選手から、取り入れられるものは何でも取り入れてトレーニングしていたが、そこには論理的考えや科学的に証明されたものがほとんどなかった。
  • その後、2000年にオリンピック競技に採用されてから人気が高まり、コーチングサービスなども生まれたが、未だに多くのアマチュア選手は3種の各競技を個別に鍛えている。
  • 本来、トライアスロンは、スイム・バイク・ランの3種目を一体として捉えるべき。スイムであればプールのような整った環境ではなく、オープンウォーターで他の選手と肩が触れ合う環境での競技であり、そのための練習が必要。バイクもロードバイクで集団走行するような練習ではなく、タイムトライアルに焦点を当てた練習がいる。ランも、疲労や水分不足、栄養不足の状態で走り、その前の2種目の結果に大きく影響を受けるため、それを踏まえた対策が必要。しかし、ほとんどのトライアスリートは、ランニングのパフォーマンスがスイムの能力や、バイクのポジション、走行ペース、そして栄養補給に影響を受けることを認識していない。スイム・バイク・ランのそれぞれの専門のコーチに個別に相談するのも良いことだが、トライアスロンは3つ競技を連続するという視点で、それらのアドバイスを見直さないといけない。

Avoid The Underperformance Condition(パフォーマンスが期待を下回る条件を避ける)

  • トライアスロンに取り組む人は、自分の時間やエネルギーを最大限活用することに奮闘するタイプが多く、それを成功している人の証と捉えていて、日中も夜も週末も予定で一杯になっている。
  • それと同じような意欲でトライアスロンのトレーニングをしても上手くいかないよく起きる問題は、トレーニングプログラムが硬直的すぎて、日々の生活に上手く合わないということ。意欲的な選手は、プログラムを予定通りこなそうとするが、そもそも日々の生活は絶えず変わるものであり、どんなに上手く設計された計画であっても、毎週、または毎日起きる予定外のことで予定を変えざるを得ない。そのため、トレーニングの成功基準を、予め決めた練習を確実に行うことや、トレーニングの合計時間と捉えている場合、すぐに失敗に陥る
  • トレーニングを計画どおり実施できないと、選手は睡眠時間を減らしたり、栄養補給を怠る。しかし、それらはパフォーマンスを支える重要な要素。本来は、非現実的で融通の効かないトレーニング計画や、多ければ多いほど良い(More is better)という考えを捨てることの方が重要
  • パフォーマンスが期待を下回るのは、絶えず状況が変わる日々の生活の中に、非現実的なトレーニングプログラムを無理やり押し込んだ結果生じるものである。

A Better Approach to Training(より良いトレーニング方法)

  • パフォーマンス向上のためには、持久トレーニングに加えて、身体の強さ(Functional Strength)、栄養摂取、カロリー補給、回復も考慮する必要がある
  • 持久トレーニングにおいてトレーニング負荷に積極的に順応するためには次の事項を守るべき。
  1. 一貫性・着実さ(Consistency)が保たれていること (※場当たり的であったり、持続性のないものであってはならない)
  2. 個々のアスリートのニーズに合わせたものであること
  3. 短期的な改善と同時に、シーズン毎の長期的な進歩も考慮に入れること
  4. 短期・中長期ともに本当のパフォーマンス向上には忍耐力が求められることを深く理解していること
  5. 健康的でいること

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  1. […] Mindset マインドセット・物の見方 […]

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